「売る」だけじゃ生き残れない、営業マンのキャリア探究Webマガジン -[営業type](営業タイプ)

仕事

どうなった?話題の店舗その後~働く女性の支持を集め独り勝ちが抱える先行き不安 ”渋谷ヒカリエ”

タグ: , ,

2015.11.11

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

hikarie

出店に際し、メディアに取り上げられるなど、話題を集める店舗は多々ある。しかし、その後が報道されることはあまりない。ただ、営業マンにとって、話題を集めた店舗の“その後”を知ることは「売る」ことのノウハウを得るきっかけになる可能性もある。

そこで、流通ライターが実際に足を運んで話題になった店舗とその現状をレポートする、雑誌『激流』の連載『どうなった?話題の店舗その後』の記事を取り上げる。

※この記事は『激流』2015年4月の記事「どうなった?話題の店舗その後 “渋谷ヒカリエ”」の転載です。

シンクスにしかないおもてなしの空間

2012年4月26日にオープンし、2日間で来館者数が約20万人、売り上げは2億9000万円という華々しいオープニングから、もうすぐ3周年を迎える渋谷ヒカリエ。年間での来館者数は2000万人を超え、売り上げも200億円を超えているようで、渋谷地区の大型商業施設では独り勝ちの状況が続いていると言われている。そんな渋谷ヒカリエの今をバレンタイン商戦の平日と休日の2日間視察してみた。

hikarie_eki

ヒカリエは、複合商業施設の名称で、オフィス、飲食店、ミュージカル劇場の東急シアターオーブやイベント施設、渋谷区関連施設が入居している。ヒカリエの中でお客が最も訪れるのは、ヒカリエの名前が一般的に浸透しているため、知名度は今ひとつだが、東急百貨店が運営する「ShinQs(シンクス)」である。

シンクスは、ヒカリエの地下3階~地上5階の8フロアを占めている。「大人が楽しむ渋谷」をコンセプトに、20代後半~40代の「働く女性」をターゲットにしている。

訪問した日が、バレンタイン直前の平日の夕方と、当日の土曜日ということもあったが、来店客を見渡すと、女性のお客が約8割という状況であった。

訪問してみると、きめ細かな女性への配慮が感じられた。床に目をやると、フロアごとのコンセプトに合ったイメージに床の色調や素材が使われており、レストスペースもカラフルな椅子やテーブルなど、こだわりのフロアコンセプトに合わせた空間になっている。女性が買い物の束の間をゆっくり休息する姿が見受けられた。

極めつけは地下にあるロッカーで、冷蔵用も兼ね備え、落ち着いたブラウンを基調とし、可愛いデザインが施されていた。女性のトイレは、著者が男性なので視認することはできないが、「スイッチルーム」と呼ばれる進化型のトイレとなっており、フロア毎に異なるテーマ、デザイン、オリジナルのBGMや消臭効果のあるエアシャワーブース、メイク直しにうれしい拡大鏡など女性の想いを満たしてくれるようになっているようだ。

お客が最も訪れるシンクスは、ヒカリエの地下3階〜地上5階の8フロアを占めている

お客が最も訪れるシンクスは、ヒカリエの地下3階〜地上5階の8フロアを占めている

このようにシンクスにしかない気配りのおもてなし空間が、売り上げ好調の下支えをしている。買い物のキーとなる出店テナントについては、優劣がはっきりしている。駅から、直結する好位置に出店しているロクシタンやマークスアンドウェブなどは、お客がある程度入っているが、ブランドの最大の売り上げポテンシャルに到達しているようには見えなかった。各ブランドが揃うデパートのようなコスメフロアもお客がまばらな状況を目の当たりにした。

また、草間彌生とワコールの限定コラボ商品を限定で販売しているラムフロムやオシャレな帽子の品揃えが多いカシラ・デリカや、雑貨屋は、少し雑多な感じもあるが、オクタホテルやトゥディズ・スペシャルなどが人気のようだ。可処分所得の高い女性を対象としており、一般の女性の日常の買い物には贅沢気味なテナントも多いが、希少な出店テナントや限定商品の販売が買い物客の魅力となっている。イオンやららぽーとなどのモールや百貨店などどこにでも出店しているテナントは、人気があっても売り上げの予定に到達していないのではないかとも推察される。

東急らしさで人気の文化ゾーン

デパ地下フロアについては、老舗百貨店のデパ地下と比べて、店員の声掛けが少なく買いやすいとの声も、複数の20代女性からも聞こえてくる。心地よい買い物も重要のようだ。シンクス全体としては、ちょっとした友人への手土産や自分へのご褒美ギフトを買いに行くニーズが多いようだ。バレンタイン売り場は、義理チョコから自分自身へのご褒美チョコの買い物客で、通常のチョコレート売り場や店への入り口通路の特設会場など、20~30代の女性で売り場がごった返していた。バレンタインのような期間限定のイベントを行うショップが多いのも、リピーターの買い上げ頻度と店舗の鮮度をあげ、売り上げアップに一役買っているようだ。

ただし、男性客にとってのシンクスはそもそも、あまり買い物をするところがなく、行ったこともない割合が高い。アウトドアファッションのA&Fカントリーは、男性も充分意識した店ではあるが、店が奥まったところにあるのと、シンクス全体が女性ターゲットのコンセプトであるためか、訪問時はお客が一人もいなかった。東急としては、女性にターゲットを徹底的に絞り、男性客取り込みは将来建設予定の商業施設と109メンズ館で、という整理整頓をしているのではないかとも推察できる。

飲食ゾーンに関しては、飲食店が路面に点在する渋谷において、様々なジャンルの飲食店が1カ所にこじんまりと揃っているので、男性も利用すればリピーターとなる確率が高いと言えるだろう。また、ヒカリエで東急らしさを発揮し人気なのが文化ゾーンである。シアターオーブは、ミュージカルファンにとっては東京の聖地になりつつある。毎年四回以上訪れるミュージカルファンの女性のお話も伺った。鑑賞後にショッピングや地下にある目新しいスイーツショップで買い物ができたり、渋谷駅から地上に出ることなく劇場に行けることも魅力のようだ。

8階にあるクリエイティブスペース8/は、アートとカルチャーを体感でき、交流や学びの場となることがコンセプト。催事が期間ごとに変わり、様々な文化的志向を持つ来館者が後を絶たないようだ。同じフロアでは、渋谷区の関連施設もあるが、一方、地方の文化的価値を大切にしているようで、昨年は地方の文化誌特集をしていたり、地方発信のイベントスペースでは関連のトークイベントが開催されていた。訪問時も地方の優れたデザインやなかなか探し出せないような伝統的な商品が47都道府県別に販売されていた。著者も含め地方出身の住民が多い首都圏では、このようなスペースは集客のポイントとなっているのではないかとも考えられる。

駅直結の利便性を生かし、集客力を高めている

駅直結の利便性を生かし、集客力を高めている

ヒカリエ全体は、集客では好調だが、渋谷再開発により渋谷駅構内が複雑化して、なかなか地上の渋谷に出にくいため、駅直結のヒカリエにお客が集中しているとも考えられる。渋谷駅の再開発は、東急東横線の元の地上線路が代官山まで遊歩道になったり、渋谷川は清流化する計画、駅構内の高層ビル化など魅力的でワクワクするプロジェクトではあるが、再開発の終了が27年で12年後とあって、あまりにも先過ぎる。渋谷駅構内の複雑化により、渋谷に行くことが減り、明治神宮前や新宿三丁目に買い物をする場所を変えたという声も著者の周りではチラホラ聞く。

渋谷全体の問題でもあるが、現状の駅直結で渋谷地区で好調のヒカリエも、数年後には他の地区の商業施設に足元をすくわれかねない懸念もある。男性としては、なかなか立ち寄る機会の少ないヒカリエだが、デパ地下やレストラン街で買い物や飲食をしつつ今後を注視していきたい。

流通ライター 法理 健

 
>> 元の記事を雑誌で読む


Information

4月号

激動する流通業界の羅針盤『月刊 激流』

『月刊 激流』は1976年、製配販にまたがる流通業界の専門誌として創刊。スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、百貨店など、小売業の経営戦略を中心に、流通業の今を徹底的に深掘りします。メーカーや卸業界の動向、またEコマースなどIT分野の最前線も取り上げ製配販の健全な発展に貢献する情報をお届けする月刊誌です。現在、弊誌編集方針として力をいれているのは、川下(小売業界)からの情報を川上(メーカー)に正しく伝えることです。『激流』の特色とは、小売業界の情報(経営、商品等々)に強いことです。それをできるかぎり誌面に反映します。
『月刊 激流』http://www.kokusaishogyo.co.jp/gekiryu/201512.html

オンライン購入はこちらhttps://www.kokusaishogyo.co.jp/notification/



どうなった?話題の店舗その後~働く女性の支持を集め独り勝ちが抱える先行き不安 ”渋谷ヒカリエ”

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

営業typeの最新情報をお届けします

編集部おすすめ

スキマ時間を英会話教室に! 忙しい営業マンに薦めたい、スマホで英語を身に付ける方法
今どき英語くらい話せないとマズイ! と思ってはみても、英会話教室に通うのはハードルが高すぎるし、本を買っても三日坊主であとは本棚でホコリをかぶったまま。もっと気軽に勉強できる方法があれば……。というのが多忙な営業マンの本 […] >続きを読む
仕事
danshimoney_ec
「買う物」「送料」「受け取り」のコツを押さえてネットショッピングで得をする【男子マネー】
しっかり稼いで、たっぷり遊んで、「結婚できる男」になる! モテる「男子マネー」 自分で稼いだお金を好きに使うのが幸せ! 若いうちは遊ばなきゃ! でも、周りの30歳前後の先輩たちを見ていると「お金がないから結婚できない」な […] >続きを読む
お金 人生
『あんな「お客(クソヤロー)」も神様なんすか?』の著者が語る、営業マンがクレームから逃げないほうがいい理由【ビジネス書3分リーディング】
著者が教える「ここだけは読んで欲しい!」ポイント 人気ビジネス書3分リーディング 本を読んでスキルアップしたいとは思いつつも、忙しくて読書の時間が確保できないあなた。そんなあなたに、人気のビジネス書の著者が、本の中で「ど […] >続きを読む
仕事
転職で変わった「働く」の意義~「お金」から「お客さまの満足」に
株式会社ファーストライフ 柏村洋一氏(36歳) 大学在学時からアパレルショップで販売を手掛け、卒業後就職。約6年間在籍した後に転職し、不動産会社の営業職に。支店で課長まで務めるが、2013年4月に2度目の転職をし、ファー […] >続きを読む
転職

このページのTOPへ