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どうなった?話題の店舗その後~住みたい街の人気立地で意外な苦戦『グランツリー武蔵小杉』

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2015.12.11

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出店に際し、メディアに取り上げられるなど、話題を集める店舗は多々ある。しかし、その後が報道されることはあまりない。ただ、営業マンにとって、話題を集めた店舗の“その後”を知ることは「売る」ことのノウハウを得るきっかけになる可能性もある。

そこで、流通ライターが実際に足を運んで話題になった店舗とその現状をレポートする、雑誌『激流』の連載『どうなった?話題の店舗その後』の記事を取り上げる。

※この記事は『激流』2015年6月の記事「どうなった?話題の店舗その後~『グランツリー武蔵小杉』」の転載です。

東京からのお客を取り込めない

セブン&アイ・ホールディングスが、新しいショッピングモールと位置付ける『グランツリー武蔵小杉』が、住みたい街として人気の高い武蔵小杉エリアに昨年11月22日にオープンしてから、約5カ月が経った。

世帯年収1000万円以上のファミリーが多く住むと言われ、ムサコ族やムサコ妻などの言葉も話題となっている。

そんなお客が来店する店舗を、4月のサクラが咲き散るまでの間の平日と土曜日の夕方に数日間、視察し買い物をしてみた。

ムサコ族、ムサコ妻も話題となった立地に出店

ムサコ族、ムサコ妻も話題となった立地に出店

『グランツリー武蔵小杉』は、日本一のモール密集地帯にある。南にはショッピングモール売り上げトップクラスを誇る『ラゾーナ川崎プラザ』、車で30分前後走れば、トヨタが運営する『トレッサ横浜』や三井の老舗モール『ららぽーと横浜』。横浜のベッドタウンであるセンター北やセンター南には、阪急や東急が運営するモールなどが複数点在している。

東京・渋谷・新宿・横浜など電車で20分圏内には多数百貨店があり、激しい競合エリアでのモール展開となった。

平日の夕方。武蔵小杉駅から歩いて3分ほどの駅近立地にもかかわらず、1階の食品フロアを除く2階以上のフロアは、お客が少なく閑散としていた。ショッピングモールは休日型の業態ということもあるが、店前でお客に複数ヒアリングすると、平日は昼間も同様の状況のようだ。

店舗の客数をウォッチすると、店員のほうが数が多い店舗があるなど大変厳しい運営が見てとれた。特にイトーヨーカドーや西武そごうの売り場が顕著で、ロフト、タワーレコード、GAP、ZARAなどのテナントもお客が10人前後だった。売り場面積が広いが故に、より店内が閑散として見え、スペースに見合った売り上げを上げられていない可能性がある。

モール通路にある専門店はより深刻のようで、調査時にはお客が入っていない店舗も多く、テナント専門店本部関係者に話を聞くと当初の集客数の当てがはずれており、モール運営側との議論が活発化しているようだ。

立地産業と言われるコンビニエンスストアでは、セブン-イレブンが圧倒的な調査でローソンやファミリーマートなど他チェーンの追随を許さない状況であるのに、ショッピングモールの立地選定には苦戦をしている模様なのが不思議でならない。

ショッピングモール競合エリアではあるが、近くに流れる多摩川を越えて東京都に入ると、ほとんどショッピングモールがないことから、田園調布など大田区や世田谷区からの富裕層の車客を想定していたと考えられる。ところが、選定テナントが客層に合っていないためなのか、土曜日・日曜日でも駐車場は並ぶことがなく入店できる状態だ。ナンバープレートをチェックしてみると、約2割が東京のナンバーで、県境ということを考えると、当初想定していたであろう東京のお客を取り込み切れていないのではないかとも推察される。

定期的な来店に繋がっていないのは、期間限定のポップアップストアやイベントが少ないのが理由ではないかとする業界関係者の話も聞いた。

また、4階は、子供のアイテムから家族のファッションやフードコートまで揃えている。まさにムサコ族をターゲットとしたフロアになっているが、ムサコ族は世帯年収が1000万円を超えると考えられているものの、長期の住宅ローンを抱えている世帯も多く、年金など先行きの不安などから、財布の紐が思ったより固かったようで、4階のテナントの売り上げは苦戦しているようだ。

飲食店は繁盛
衣料品は不振の構図

近隣のスーパーらと比べて、ヨーカ堂の木曜の夜の惣菜は割引率50%と高い値となっていた(ダイエーのフーディアム)

近隣のスーパーらと比べて、ヨーカ堂の木曜の夜の惣菜は割引率50%と高い値となっていた(ダイエーのフーディアム)

ただし、フードコートは4階にもかかわらず休日は埋まっていて、昼時などは席を容易に取れない場合も多い。訪問した平日の夕刻も約3割程埋まっており、好調さが見受けられた。

1階にあるレストラン街も、1500円以下で食べられる店は繁盛していて満員だった。牛タンの『喜助』は5名の行列があったが、お店の人に話を聞くと、ピーク時には行列が絶えないようだ。飲食店は、『グランツリー武蔵小杉』の今後のキーファクターになるのかもしれない。

すでに検討に入っているのかもしれないが、ロイヤルユーザーである武蔵小杉駅近くの高層マンションに住むムサコ族のニーズや状況、住民が歳を取っていくことも鑑み、短期・長期の両視点でテナントの入れ替えや売り場の大きさの変更など、実行するのは先になるとしても、ロードマップを描く必要がある。メインテナントである、イトーヨーカ堂の決算は、14年度純損益が68億円の赤字で、『グランツリー武蔵小杉』の来店客数を見てもイトーヨーカドーのフロアの販売不振が見て取れる。特に衣料品の売り場は、この2回の訪問時以外にも常にチェックをしているが、お客が入っているのをほとんど見たことがない。

イトーヨーカドーは店舗数が180店舗と少ないこともあり、衣料品PBは、例えば男性肌着などはフジボウアパレルやグンゼなどの日本有数メーカーと共同開発している。そのため、ユニクロなどのSPA企業より、素材セレクトや縫製ノウハウが上回っていると考えられる。が、圧倒的なVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)ができる商品の物量と宣伝でSPAの後塵を拝しているため、商品の品質や価格以前の段階で購買されていないというのは、購買が横に倣えとなりがちな日本らしい現象かもしれない。

『ららテラス武蔵小杉』

『ららテラス武蔵小杉』

食品売り場では、近隣に駅直結の三井グループの『ららテラス武蔵小杉』の成城石井やダイエーのフーディアム、駅逆口の地域に根差しているイトーヨーカドー武蔵小杉店といった競合の食品スーパーが多数あるものの、お客が一定数来店している。

しかしながら、少し心配になる光景も目にする。木曜日の19時30分の惣菜売り場はお客でごった返していたが、理由は惣菜の割引の大半が50%引きで、豊富な品揃えがあるためだった。

近隣の食品スーパーを回ってみると、駅直結の『ららテラス』で惣菜を売っているテナントは売り切れ、もしくは30%前後の割引率で、ダイエーのフーディアムも同じく30・40%の割引率だった。2店とも販売スペースが『グランツリー武蔵小杉』内のヨーカドーと比べて狭く、適正な売り場スペースとなっているように感じる。食品売り場は近隣の有職女性をターゲットにしているのはわかるが、売り場が広いため品揃え量が多く、売れる量と売り場のバランスで、割引率も50%引きと高くなっていると思われる。そのため、他の2店と比べて、駅から遠くてもお客の支持はある反面、定価販売では買わないお客が日を追うごとにどんどん増えていっている気がする。

フランチャイズという特性はあるが、セブン-イレブンが定価販売にこだわりを見せているのとは対照的な光景であった。また、50%引きの惣菜に群がる近隣住民を見ると、100円ショップや家電量販などの大衆テナントの早期導入の必要性も感じた。

2階部分にある西武・そごうは、客層の違いもあり、店内への誘客に苦戦しているようで、タイムセールなどを店先で行い、店内にお客を呼び込んでいるようだ。

オムニチャネルの実験としてそごう横浜店と西武渋谷店をライブ中継で繋ぎ販売を実施しているが、事前予約制であるにもかかわらず、お客の利用が少ないのか、簡単に予約が取れる状況であった。

そもそも両店とも、武蔵小杉から電車で15分前後で行ける立地のため、わざわざライブ中継で買い物をする必要がないからとも考えられる。

今後、地方のお客がライブ中継で都会の店員と接することが可能性としてはあると考えられるので、現状の苦戦はあるものの、今後もこのサービスの変遷を見守っていきたいと思う。

またオムニチャネル戦略は、鈴木敏文会長が「第2の創業」と位置付けている悲願でもある。10月から本格スタートすると言われるが、今後の展開に大いに期待をしたいと思う。

セブン&アイ・ホールディングスの取締役には、サラリーマン経営者のご子息としては珍しく社内外の賛否がある、次男の鈴木康弘氏が就任した。『グランツリー武蔵小杉』は、親子2代での取り組みとなるオムニチャネル戦略およびセブンイレブン以外のグループ小売業の未来を占う上での試金石になると考えられる。

そんな日本小売業の歴史の1ページをリアルな売り場で検証しつつ、並行して買い物を楽しんでいきたいと思う。

流通ライター 法理 健

 
元の記事を雑誌で読む
>> http://www.kokusaishogyo.co.jp/gekiryu/post.html


Information

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『月刊 激流』は1976年、製配販にまたがる流通業界の専門誌として創刊。スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、百貨店など、小売業の経営戦略を中心に、流通業の今を徹底的に深掘りします。メーカーや卸業界の動向、またEコマースなどIT分野の最前線も取り上げ製配販の健全な発展に貢献する情報をお届けする月刊誌です。現在、弊誌編集方針として力をいれているのは、川下(小売業界)からの情報を川上(メーカー)に正しく伝えることです。『激流』の特色とは、小売業界の情報(経営、商品等々)に強いことです。それをできるかぎり誌面に反映します。
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