営業type(営業タイプ) - 「売る」だけじゃ生き残れない、営業マンのキャリア探究Webマガジン http://sales.typemag.jp 『営業type』(営業タイプ)は、20代若手営業パーソンを応援し、営業スキルやビジネスパーソンとしての長期のキャリア構築を提案するWebマガジンです Thu, 24 Aug 17 13:51:13 +0900 「転職で年収17倍」「おのののかの営業ノウハウ」「トップアスリートの勝利の哲学」など、2015年の記事ランキング http://sales.typemag.jp/article/6482 neta 6482 Thu, 31 Dec 2015 12:00:14 +0000 こんにちは。営業type編集部です。

2015年1月末にサイトをオープンした『営業type』。11カ月間で公開してきた記事のうち、よく読まれているものをランキング形式でお届けします。読み逃していないか、今すぐチェック!

1位

転職で年収17倍!「能力ではなく可能性を信じる」26歳アメフト元日本代表営業マンの仕事哲学 >> http://sales.typemag.jp/article/4474

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2位

リピーター率88.6%! とある旅館女将のすご過ぎる「顧客囲い込み」戦略 >> http://sales.typemag.jp/article/3343

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3位

営業マンになったAV女優――「ファンの人から、今の方が輝いてるって言われるんです」 >> http://sales.typemag.jp/article/3254

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4位

『口ベタ営業マンが渋谷ギャルをナンパし続け半年後に1億の契約をとった件』著者が教える、真の「コミュ力」の鍛え方【人気ビジネス書3分リーディング】 >> http://sales.typemag.jp/article/346

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5位

「No.1ビール売り子」おのののかが語る、20代の「素直さ」を最大限生かす営業スタイルのすすめ >> http://sales.typemag.jp/article/2032

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6位

「最低でも50万円」何で若いうちからこんなに貯金しなくちゃいけないの?【連載:男子マネー】 >> http://sales.typemag.jp/article/2173

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7位

営業トップの厳しい男と、営業成績イマイチな優しい男、カッコいいのはどっち? >> http://sales.typemag.jp/article/527

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8位

プロレスラー棚橋弘至がビジネスマインドを説いたら、誰でも「100年に1人の逸材」になれることが分かった【スポプロ勝利の哲学】 >> http://sales.typemag.jp/article/260

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9位

ソニー社長秘書から保険営業へ転身、なぜ彼は入社5年で3年連続社長賞を獲れたのか >> http://sales.typemag.jp/article/472

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10位

地球上の8000m峰を全て制した登山家が次に目指したのは、4.5mの天保山だった【スポプロ勝利の哲学】 >> http://sales.typemag.jp/article/4443

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僕らは営業マンのために何か遺せたでしょうか

2015年1月、『営業type』は営業マンのキャリアを考えるWebマガジンとして創刊されました。 そもそも、なぜ営業マンのキャリアを考える必要があるのか。それは、人生を豊かにする大きい要素の一つとして、「シゴト人生が豊かであること」があると考えているからです。 「営業」という職種は、営業成績という「数値」で評価されることが多く、肉体的・精神的な疲労や悩みが蓄積されやすい職業です。それゆえ一般的には、他の職種に比べて定着率が低いと言われています。しかし、一方で、「営業」は経済活動の始まりだとも言われており、とても価値の高い職業でもあると思います。 『営業type』では営業マンの仕事や生活、精神を豊かにするためのヒントが提供できればと、これまで500本以上の記事を制作してきました。11カ月間、多くの有識者や営業マンへの取材を通じて改めて感じたのは「営業という仕事は社会と経済を動かす、最高に刺激的な仕事である」ということでした。 私たちには、直接的に売上を上げるサポートができるわけでもありません。皆さんの営業に同行して商材の魅力を語れるわけでもありません。私たちにできることは何か。それが、有識者の経験や知識を紹介することで悩みを解決したり、トップ営業マンのインタビューを通じて、営業マンの「シゴト人生」を豊かにすることでした。 私たちは営業マンのために何か遺せたでしょうか。 すでにお伝えさせていただいておりますとおり、『営業type』は2015年12月31日をもって、記事の更新を終了し、来春から『営業type』は転職サイト『@type』のいちコンテンツとして、引き続き営業マンの皆さんのキャリアを応援していきます。 記事の更新はしばらく止まってしまいますが、営業マンの皆さんが、売り上げで悩んだとき、人間関係で悩んだとき、そして、将来のキャリアについて悩んだとき、そのヒントを探すために開くのが『営業type』の記事であればとても幸せです。 それでは、いつか皆さんのお目にかかれるその日まで。   文/佐藤健太(編集部)]]>
お金に愛されるビジネスマンがやっている10のこと【男子マネー】 http://sales.typemag.jp/article/6499 neta 6499 Mon, 28 Dec 2015 07:00:13 +0000 しっかり稼いで、たっぷり遊んで、「結婚できる男」になる! モテる「男子マネー」

自分で稼いだお金を好きに使うのが幸せ! 若いうちは遊ばなきゃ! でも、周りの30歳前後の先輩たちを見ていると「お金がないから結婚できない」なんて壁にぶつかっているらしい……。とはいえ、お金にケチケチした男はモテない、どうしたらいいんだ~。というわけで、愛する彼女(今はいなくても)に奥さんになってもらえるよう、今からスマートなマネー力を身に付けるべし!

プロフィール 営業type

ハートマネー代表 氏家祥美

お金と仕事の相談室「ハートマネー」代表。立教大学卒業後、旅行会社で営業職を担当。結婚や出産を経てファイナンシャルプランナーの資格と出会い、2005年にFP会社を仲間と設立。2010年より独立。結婚・出産・マイホーム購入時の家計相談のほか、転職・起業時のマネープランを得意とする。「いちばんよくわかる!結婚一年生のお金」(学研パブリッシング)、「35歳を過ぎた女性に贈るこれからのお金のお作法」(秀和システム)ほか著書多数。http://www.heart-money.net/

10年後、皆さんはどんなふうになっていたいですか?

出世したい、転職したい、彼女が欲しい、結婚していたい、子どもが欲しい、貯金を増やしたい、マンションが欲しい……など、いろんな希望があるでしょう。

10年後、そうした夢がかなっているように、そしてその後もずっとハッピーな人生を送れるように、お金に愛されるビジネスマンがやっている10のことをお話ししたいと思います。「お金」「自己投資」「家族」と3つに分けて解説します。ぜひ最後までご覧ください。

今回のテーマ:お金に愛される人は、愛し上手、愛され上手

今すぐ身に付けたい、お金に関する4つのルール

(1)自動積立で貯蓄習慣

お給料が上がっても、貯蓄習慣のない人はあればあるだけ使ってしまいます。だからこそ、若いうちに少額からでも自動積立で貯金をしましょう。月に5000円~1万円からでも大丈夫。まずは無理のない金額から始めてください。貯金が全くない人は、転職も結婚もできませんよ。(自動積立については、この回に詳しく解説しています) ⇒http://sales.typemag.jp/article/2422

(2)お財布はスッキリ

人のお財布って結構よく見られています。職場の人や取引先の人と一緒に食事をすることもあるでしょう。そんなとき、ポイントカードでパンパンのお財布や、レシートと小銭が混在しているお財布はみっともないというもの。カード類は必要な数枚だけに厳選して、レシートは家に帰ったら毎日お財布から出すように心掛けて。

(3)カードは1回払い

クレジットカードを利用する頻度は、年齢や立場が上がるほど増えていくでしょう。カードを使わない方がお金は貯めやすいのですが、使うなら金利が掛からない1回払い限定に。リボ払いを使うと、1回あたりの返済は少額で済みますが、15%前後もの金利が掛かって、総支払額が膨大になります。

(4)投資信託で資産運用

貯める習慣が付いたら、ぜひ投資信託にもチャレンジしてみましょう。元本保証ではありませんが、長期でゆったり運用すると大きく増える可能性があります。経済ニュースに連動して自分のお金が増減する感覚を楽しめるようになったらしめたもの。投資を通して身に付けた経済の先読み力は、あなたに仕事力という大きなリターンももたらすことでしょう。

手軽にできる、自己投資に関する2つのルール

(5)本を読む

文化庁が2014年に行った「国語に関する世論調査」によると、マンガを除く1カ月の読書量は、「1、2冊」と回答した人が34.5%。「読まない」という回答は、最多の47.5%に。本による知識の積み上げは、年齢を重ねるほどに物を言います。言葉の端々から教養があふれ出る大人になりたければ、スマホを置いて本を読みましょう。

(6)会いたい人に会いに行く

「こうなりたい!」という欲求は、ときに人を大きく成長させます。本を読んで、ネットで知って、憧れた人がいたら、ぜひ会いに行きましょう。講演会や舞台、競技大会など、本人に会える手段は意外とあります。身近な人であれば、友人の紹介でアポを取る方法も。チケット代や交通費という自己投資は、後からいくらでも取り返せます。

一番大事な、家族に関する4つのルール

(7)結婚の決断は若いうちに

若い皆さんにだからこそ言っておきます。仕事が忙しくてそれどころではない、男同士の方が面白い、いろいろあるとは思いますが、結婚の先延ばしは損です。ライフプランを先延ばしした先には、教育費と住宅ローンが退職後も続く貧しい老後が待っています。「独身生活を十分謳歌して、気が向いたら40代半ばで若い魅力的な女性と結婚したい」、それは世の男子の願望ですが、福山雅治だからなせる業です。

(8)共働きとイクメンはお金持ちへの近道

貯金や投資だけが資産形成ではありません。何よりも確実なのが、ふたりで働く共働きです。2つの収入源で、1つの家に住むのですから、お金が貯まりやすいのは明白です。その分、家事や育児も付いてきますが、それは相応に引き受けて。これからの管理職は、家事や育児、介護などへの理解も重要です。生活経験を仕事に活かしていきましょう。

(9)妻や親に感謝を伝える

「愛しているなんて言わなくても分かっているはず」というのは昭和のお話。欧米人を見習って「愛している」「感謝している」と口に出して伝えましょう。なぜなら、離婚は大きなリスクだから。盛大な結婚式も、素敵なマイホームも、離婚で瞬時に消え去ります。そうそう、親子関係も良好に。身近な人にこそ感謝の心を忘れず、言葉やプレゼントという形にして感謝を伝えてください。

(10)親を大切に

仕事や暮らしで忙しい毎日だと、自分のことで精いっぱい。親が若くて元気なうちはそれで済むかもしれませんが、それは永遠ではありません。ある日突然、「オレオレ詐欺に遭っていた」「痴呆になっていた」と連絡を受けたのでは悔やみきれませんよね。日頃からの良好な親子関係があれば、贈与が舞い込んでくる可能も。まぁ、そんな損得は考えず、思い出した時に親に連絡してみてくださいね。

 

以上、お金に愛されるビジネスマンがやっている10のことでした。結婚だけは相手がいることではありますが、あとは自分で今すぐできる簡単なことばかり。お金というと目先の損得ばかりに目が行きがちですが、実は周囲の人と良好なコミュニケーションを保つことが、お金に愛される一番の秘訣なんです。

10年後の皆さんの幸せに期待して。またお会いする日まで!!

 

Information

営業type 「35歳を過ぎた女性に贈る「これからのお金のお作法」」(秀和システム)

コミュニケーション能力を高めるには、相手のことをよく知るのが一番の早道。社内の先輩女性、営業先で、年上の女性と話す機会が多い人は、ぜひ本書を読んでみて。35歳を過ぎた女性がこれからの生活にかかえる不安や希望を身近に感じられます。そして、結婚・出産・マイホーム購入時のお金など、あなた自身の将来設計にも必ず役に立つ1冊です
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過去のモテる「男子マネー」の記事はこちら >> http://sales.typemag.jp/category/money/mens-money

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ソフトバンク接客コンテストで日本一を獲った男が語る、正義の営業論。「顧客満足が提供できないビジネスはありえない」 http://sales.typemag.jp/article/6471 neta 6471 Fri, 25 Dec 2015 07:00:49 +0000 2012年、東京・築地にある浜離宮朝日ホール。そのステージの上で、スポットライトを浴びる若い男性がいた。彼が持つ優勝カップには、ソフトバンクの役員をはじめ会場に集まった約500人の視線が注がれている。

彼の名前は武田佳祐。当時21歳、ヤマダ電機日本総本店で働くソフトバンクの派遣社員だった。彼は全国3800人が参加する接客コンテストの優勝を機に正社員になり、その後2年で6店舗を統括するスーパーバイザーに上り詰めた。

現在は、店舗の開業・改装を考えている人と店舗デザイン・施工会社をつなぐシェルフィー株式会社で営業統括を務めている武田氏。一見すると、全く違う仕事をやっているように見える。しかし、武田氏のインタビューを通して、彼を日本一に導いたある種の「正義感」のようなものが、彼の営業マン人生の根底にあることが垣間見えた。

[caption id="attachment_6472" align="aligncenter" width="705"]営業type シェルフィー株式会社 ビルダーリレ-ション部 セールス統括 武田佳祐氏[/caption]

買ってもらうのではなく、満足してもらう

「人に喜んでもらうことが好きだったんです」

1990年生まれ、今年で25歳になった武田氏はそう語る。高校卒業後、フレンチレストランでサービスマンとして働き、その後ソフトバンクに派遣社員として入社。当時ソフトバンクだけで販売されていたiPhoneの販売員として派遣されたのは、池袋にあるヤマダ電機の日本総本店だった。

「家電量販店勤務を志望したのは、いろんな客層と触れ合えるからです」

派遣先にソフトバンクを選んだのにも理由がある。当時のソフトバンクはCS(カスタマーサティスファクション)を重要視していたからだ。

しかし、実際に入社し、店頭で接客を始めた武田氏は理想と現実の差にショックを受ける。

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「CS重視と言いつつも、周囲の同僚たちは『とにかく売上を上げよう』と必死になっていたんです。1人1人の来店客に全力を尽くすその接客に尊敬する一方で、どこか違和感を覚えました」

当時の同店舗は、買い物客がひっきりなしに訪れていた。断られる度に気持ちを擦り減らすような接客をしていたら精神衛生的に良くない上、しつこい接客は受ける側にとっても迷惑だ。疲弊していく割に成績が伸びない同僚を見て、彼はそう考えた。

「その頃、ソフトバンクは回線数ナンバーワンを目指し、携帯の端末代金が減額できない代わりに副商材をセットに提案していました。でも、副商材であるデジタルフォトフレームの入った大きな紙袋を、重そうに提げてお帰りになるお客さまの後姿が、顧客満足とはかけ離れた物に見えたんです」

きちんと説明をしていたとしても、そのように契約した顧客に限って「子どもが安さに釣られて買わされた」と言って親が解約に来たり、2年後のMNPのタイミングでの解約が後を経たなかったという。

たとえセットで販売した商品でも、納得の上で顧客に満足してもらい、クレームが減れば、その分接客に費やす時間が増える。また、クレームを受けないことでスタッフの雰囲気も良くなる。いつか自分がマネジャーになった時のためにも、顧客満足度の高い接客を心掛けようと決意した。

「私が心掛けていたのは、あえて積極的に売る努力をしないこと。まずは『今日は何を買いに来られたんですか?』など、世間話から始めるようにしました。そこで、購買の意欲がなければ、いったん商品をお勧めするのは止めます。また、仕事帰りに立ち寄った人は週末に家族連れで再来店し、家族全員で乗り換えてくださるかもしれないので、メリットを説明するだけにとどめて無理なクロージングはしませんでした」

武田氏の考えは当たり、成績はぐんぐんと上昇。ソフトバンクの接客コンテストの出場条件である、販売台数と顧客満足度の基準をクリアし、優勝を収めたのだ。

営業によって顧客が損をするのはおかしい

その後、23歳で6店舗を統括するスーパーバイザーに就いた武田氏。しかし、個人向け営業を極めたいという思いと、人生で一番大きい買い物を手伝いたいという思いから、野村不動産のマンション販売の営業職に転職する。

野村不動産という会社を選んだ理由はそれだけではなかった。

「野村不動産は、『30年後のリピーターを狙う』と社内で掲げるくらい、顧客満足度で業界1位を目指していたからです。お客さまに長くお客さまでいてもらうためには、顧客満足度が重要です。顧客満足度が高ければ、何十年経ってもリピート受注は入る。そのビジョンに共感したんです」

しかし、24歳で彼はまた転職することになる。彼が転職先に選んだのはベンチャー企業のシェルフィー。同じ建築業界に関わる仕事とはいえ、なぜ大手からベンチャーへの転職を踏み切ったのか。

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「ソフトバンクの時、私と同じ職位であるスーパーバイザーは全員年上でした。学ぶことも多い一方で、同年代の活躍や自分よりも若くて刺激を与えてくれる人が周囲にいなくなった時、自分はより成長できるのかという不安に駆られました。実はその頃からベンチャー企業への転職を考えていたんです」

自分の同年代や、自分より若く志の高い人の多いベンチャーで、会社や組織を拡大する側をやりたいという思い。それがベンチャー企業への目を向けさせた。また、この転職の際も、武田氏の信念が顔を覗かせた。

「不動産業に接すれば接するほど、不動産業界の『闇』の部分が見えるようになってきたということもありました。一般的に、中古マンションが売れるためには、まず売主と買主の間にそれぞれ仲介業者が存在します。本来であれば、売主側の仲介業者が売主から手数料をもらい、買主側の仲介業者に連絡し、買主が契約したタイミングで、買主側の仲介業者に手数料が支払われます。しかし、中には売主側の仲介業者が、売主と買主双方の手数料の独り占めを狙い、買主側の仲介業者から問い合わせが来ても『もう売れた』と嘘の報告をし、自力で買い手を探すケースもあるんです」

「お客さまが損をするのはおかしい。ITならこの業界を変えられるかもしれない」。他業界に比べ、IT化が進んでいない建築業界だからこそできることがあると武田氏は考えた。

営業は満点じゃなくていい。相手の立場に立てるかどうか

しかし、IT化の遅れゆえの困難もある。シェルフィーが行っているのは、飲食店や美容院など、店舗の内装工事の案件と工事を受ける施工管理会社のマッチング。営業先は40代後半~50代が中心でITリテラシーが高くない上、今までの同業者が誠意のない営業をしてきたこともあり、ITにアレルギーを持っている人も少なくないという。

「今までも類似のサービスはありましたが、それはWeb完結の成果報酬型でした。初期コストはかかりませんが、良い案件とのマッチングは100件に1件。しかも、発注側の質が低く、見当違いな金額での施工を要求してくる人ばかりだったそうです。アフターケアもなく、受注者の顔も見えない。施工管理会社の人たちは、Webサービスの営業マンに不信感を持つようになっていました」

そんな負のイメージもあり、営業先の中には、椅子にふんぞり返るように座り、「声が小さい!」と武田氏を威嚇するような態度を取るところもあったという。しかし、現在ではその施工管理会社もシェルフィーのユーザーだ。

「この建築業界は、紹介で狭い世界で仕事を回してきたこともあり、閉鎖的なんです。だから、施工会社が直接大手企業に売り込んでも取り合ってもらえません。第三者であるシェルフィーが信頼を勝ち取って、質の高い案件を提供することがお客さまの満足につながるのだと思います。どんな仕事でも、意識していたのはお客さま目線であること。お客さまの立場に立って接客や営業ができれば少し納得度に欠けたとしても、残りを信頼が補って契約してもらうことができる。たとえ100点満点じゃなくても、『この人のために自分は何をしてあげられるのか』を考えているかどうかが重要なんだと思うんです」

 

取材・文/佐藤健太(編集部) 撮影/柴田ひろあき

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年商10億、新潟の夜の街を変えた女性社長は、なぜ「地方は売れない」の常識を覆せたのか http://sales.typemag.jp/article/6426 neta 6426 Fri, 18 Dec 2015 11:00:07 +0000 新潟市の繁華街、古町。2005年のある日から、路地に並ぶクラブやキャバクラに足しげく通う若い女性がいると噂が広まった。キャバ嬢のようなドレスをまとってはいるものの、両手には大きなカバン。中にぎっしりと詰まった華やかなドレスを、飛び込みで売り歩いていたのだ。

その女性は、当時23歳、わずか8坪のドレスショップをオープンしたばかりの清水彩子さん。彼女はその後10年を経ずして、年商10億円を超える敏腕経営者となる。

それまで営業経験はおろか就職経験もなかったという彼女はなぜ、新潟という地方の一都市を起点に成功をおさめることができたのか。

売れないことを自分の置かれた環境のせいにし、逃げ道をつくることは営業マンなら一度は経験があるだろう。しかし、それで良いのだろうか。地域性、知識量、技術、全ての不利を乗り越えるエネルギーとなった、彼女なりの商売の鉄則について聞いた。

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株式会社sugar 代表取締役

清水彩子/しみず・あやこ

1982年生まれ。高校卒業後、就職せずに、家族で開業したコンビニエンスストアを手伝う。衣服のオークション出品を経て、2005年6月に新潟市でドレスショップを出店し個人事業主に。07年にネットショップを開設。09年2月に社名を『sugar』として法人化。現在、『sugar』をはじめとした4ブランドのネットショップと、新潟市内に2つの実店舗を運営し、年商10億円超のビジネスを牽引中

新潟で起業した理由は「そこに商機があったから」

清水さんのキャリアは高校卒業と同時、家業の手伝いから始まる。

それまで勤めていた会社を定年退職した父が、第二の人生のフィールドとして開店したのがコンビニだった。高校卒業後、特にやりたいこともなく、就職していなかった清水さんに両親は家業の手伝いを勧めた。しかし、当時彼女は19歳。遊ぶお金が欲しくても、家族経営のため、両親から高額な時給をもらうには気が引ける。そんな時、自分の小遣い稼ぎのために始めたのがネットオークションだった。

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「私が着古した買値8,000円のTシャツが2万5,000円で落札されたんです。中古でこれなら新品はもっと高く売れるはずだと思いました。当時の貯金の全てを使って、ショップに同じTシャツを買いに行ったのが、今の事業のきっかけでしたね」

その後、商材としてドレスを扱うようになった清水さん。それまでのアパレル販売と同じようにショップで買って、ネットで売る、というビジネスを続けていた彼女だったが、ふとあることに気付く。

「その頃、問屋から仕入れればもっと利益率が高くなると気付いたんです。当時はそのことすら知らなかったんですよね(笑)。それで、問屋さんに直接仕入れたいとお願いしに行ったんですけど、店舗を持たないと卸せないと言われたんです」

店舗探しを始めた清水さんが、結果的に店をオープンさせたのは小学校から高校までを過ごした新潟市。しかし、当時の彼女の住まいは埼玉県だった。長い期間を過ごした土地とはいえ、人口の多さからも、東京に近いことによる地理的な条件からも埼玉の方が有利に見える。なぜ彼女は新潟という土地を選んだのか。

清水さんにその疑問の答えを求めると、「直感です」という回答が返ってきた。

「私自身、新潟に帰るつもりなかったんですよ。寒いし、雪は降るし、埼玉に比べたら何にもないし。でも、たまたまゴールデンウィークに友達に会うため新潟へ戻った時、繁華街で働く女性たちが目に止まったんです」

彼女たちが着ていたのは、ピンクやエメラルドグリーンの派手な色のスーツ。肩パットを入れ、前髪を内巻きにしたその姿は、1990年代から時計の針が止まっているようだった。ここなら都会ではあたりまえの、きらびやかで派手なドレスが売れるに違いない、彼女はそう確信した。

思い立った彼女はゴールデンウィーク中に契約書を書き、翌月にはその繁華街に8坪のドレスショップを構えるオーナーとなっていた。

行動すれば必ず突破口は開く

しかし、店舗を持ったからといってすぐに軌道に乗るわけでもない。

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「出店してから2年近くは月に200万円くらいの売上げが続きました。仕入額を考えるとあんまり儲かってなかったんです。店で待っていてもお客さんは来ないんだと思って、外に売り込みに行こうと思いました」

清水さんが始めたのは、自分自身が商材であるドレスを着ての飛び込み営業。自らがドレスを着ることで、ドレスの魅力を分かってもらえる、彼女はそう考えた。

夜の街を一軒一軒訪ね歩く日々。最初はまったく売れず、門前払いが続く。生来前向きな清水さんもさすがにめげそうになったというが、そこで諦めなかったのは、行動することが必ず突破口を開くと信じていたからだ。

「新潟の人の性質として、外から来た人にすぐには心を開かない性質があるんです。でも逆に、一旦心を開いてくれるととてもよくしてくれるんです。きっかけはあるお店の店長さんでした。彼は東京の夜の街を知っていて、スーツ姿のキャバ嬢を『ダサい』と感じていたみたいです。その店長さんが知り合いのお店に紹介してくれてからは、一気に販路が広がりました」

店を訪れる人が増えたおかげで、顧客からの「こんなドレスが着たい」という要望も増えた。そこで清水さんはメーカーにオリジナルドレスの相談をする。しかし、小ロットのため、聞き入れてもらえなかった。

「ドレスのタグを見たら、みんな『Made in China』って書いてあるんです。だから、自分で中国に工場を開拓しに行くことにしました」

言葉も分からない。当てがあるわけでもない。それでも彼女は単身中国へ乗り込んだ。結果として、彼女はこの旅で、自社製品の製造ラインを確保することになる。しかし、この旅では自身の身の危険を感じることもあったという。

一見無謀にも思える危なげな行動力。しかし、これこそが彼女の強みでもある。

言い訳してるだけじゃ何も変わらない

彼女に自らの強みを問うと、「考えすぎないことと、運が良いことかな」と笑って話す。

「考えれば考えるほど、難しいこととか無理そうなことばかりが思い浮かんできて、結局は挑戦することをやめてしまうような気がします。同じうまくいかないのなら行動して失敗したほうが、何もしないより学ぶことはたくさんあると思うんですよね」

中国の工場集積エリアへ出かけていって引き受けてくれるところを探す。ネットショップを開設するため、タイピングすらできないのに独学でECサイトを立ち上げる。あれこれ考え、準備に時間をかけるくらいならまず動く。清水さんならではの行動哲学だ。

2009年、彼女が個人として行っていた事業は収益額があまりに大きくなり、税務署から法人化を勧められることになる。その際の彼女の反応にも、「まず動く」という行動哲学が顕著に表れている。

「年商が3億円を越えた頃に税務署の方が来られて、『法人にした方がいいですよ』って。法人税も2年間免除になるっておっしゃったので、『あ、お得かもしれない』って」

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2015年、新潟の古町で肩パット入りのスーツを着るキャバ嬢を見ることは、ほとんどない。一見すると逆境かと思われたフィールドで、清水さんは「新しい文化」を創った。

「自分の商品が売れないと、環境のせいにしたり、商材のせいにしたりと、言い訳を言う人がいるかもしれません。でも、そんなことに時間を使うなら、売るための“次”の行動をしたらいいと思います。デザインが悪いのか、値段が高いのか、買いにくいのか。自分が思う『売れない原因』を解決するために、デザインを変えるために企画部署と交渉をする、開発部署と一緒にコストを見直してみる、ユーザーが買いやすいようにマーケ部門に助言してみるなど、営業マンという枠を超えて行動すべきだと思うんです。こういう風に前向きに行動していれば、きっと運も向いてくるはずです」

 

取材・文/浦野孝嗣 撮影/竹井俊晴

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「スポーツビジネスの新たな領域を確立したい」学生時代に事業部を立ち上げた、採用サポート事業の営業マン http://sales.typemag.jp/article/6445 neta 6445 Fri, 18 Dec 2015 10:30:13 +0000 同僚も、友達も、お客さんも、全部ボクらの人脈だ! 営業マンの“つながリスト”

“つながリスト”――それは営業マンにとって必須の「人脈のリスト」のこと。仕事ではどうしても顧客リストばかり増やしがちだが、実は大事なのって利害関係を越えた横のつながり。現役営業マンたちをリレー形式でつないで、等身大の人脈構築ノウハウを学ぶ!

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つながり№012 「学生に寄り添った独自の営業が強み」

【DATA】 会社名:株式会社大学スポーツチャンネル 部署名:キャリアサポート事業部 氏名:中島幸司(なかしま・こうじ)さん 年齢:23歳 出身:東京 キャラクター:人とのつながりを大切にし、人好きで社交的な性格。一方で、サバサバした一面もあり、自分が思ったことははっきりと伝えることもあるそう

  中島さんを紹介してくれた前回の“つながリスト”はこちら >> http://sales.typemag.jp/article/6069   Q.1 営業スタイルは?

業務内容は、体育会大学生に特化した、企業の採用支援と学生の進路支援を行っております。大学はパートナーとしての位置付けで、顧客さまは民間企業です。そこへの採用戦略のサポートが商材と言えますね。また、私の役職はマネージャーですが、少人数での事業のため、営業活動も行っており、法人企業・大学・学生の3者に対しての営業活動を行っています。

実はこの事業、私が大学生の時にアルバイトで当社に勤めていた際に、社内で立ち上げました。アルバイトを通し体育会系の学生と関わったのですが、“ヒト”としての価値の高さに驚いた一方で、就職の機会に恵まれてないように感じたことがきっかけでした。ただ、在学時よりは卒業後に入社してから本格的に始動したという形ですね。

また、学生への営業がある点がこの事業の特徴かと思います。学校からの紹介で、大学の体育会部活動(サークルや2部会は除く)に所属している学生へ直接コンタクトを取れるため、LINEで日々学生とやりとりしています。

部活動の相談に乗ったりしながら等身大の学生の姿を見て、就職活動に対して感度が高く前向きな学生に対して進路に関する情報を共有しています。その後、実際の就職活動の段階になった時に企業側とのマッチングを図る形で、採用のサポートを行っています。

私自身がスポーツはいろいろと経験してきたので、チーム作りの相談を受けたり、一緒に練習することもありますよ(笑)。

今後は、当社をスポーツビジネスの面で影響力のある会社にするため、事業を社会的にしっかり確立させていきたいですね。

Q.2 仕事での“つながリスト”を教えてください。 [caption id="attachment_6448" align="alignright" width="300"]営業type 学生との連絡は、LINEで1日に何十回と行っている。スマートフォンとPCで常にアプリをチェックし、即レスを心掛けているとのこと。[/caption]

当事業部内では、私を含めて男性2名で営業を行っており、一緒に営業を行っている者がつながリストですね。

もともと大手企業で営業をしていた者ですが、当社のセミナーに参加したことをきっかけに、応募してくれました。社歴的には後輩ですが、年齢も社会経験も私よりはるかにあるベテラン営業マンです。なので、基本的なビジネスマナーや、私が苦手だった法人営業の際の商談のテクニックなどを教えてもらい、いつも勉強になっています。

また、学生営業もある特殊な業務ですが、バランス良く行ってもらい、本当に感謝しています。

Q.3 新しい“つながリスト”の作り方は?

仕事を意識して人脈を増やすことはありませんが、新しく知り合った方には、自分から声を掛けるようにしていて、性格が合うなと思ったら深く付き合うタイプですね。友人は多い方ですが、人間関係を大切にしたいと思っていて、その意味では、人とのコミュニケーションをしっかりとるよう心掛けています。

また、昔から自分発信で友達とキャンプなどに出かけることは多かったり、シェアハウスの運営も行っているので、友達と住みつつそこから友人の輪が広がることもありますよ。

Q.4 SNSの“つながリスト”を教えてください。

SNSならFacebookの利用が多く、現在登録している友人の数は1120人ですね。実は、ヒッチハイク旅行が学生のころから好きで、現地で仲良くなった人とつながっています。各地の知り合いに近況報告もしつつ、次回訪れる時に会う約束をしたりと、再会するには便利なツールだと思います。屋久島にパパ・ママ的な存在の方がいて、社会人になる際のアドバイスをもらったりもしました。

Q.5 営業としての“テッパンネタ”ってありますか?

ヒッチハイク旅の経験は、皆さん楽しく聞いてもらえると思います。最近だと仙台の友人に会いに行きました。案外行けるもので、片道5時間くらいでしたよ(笑)。コツは、サービスエリアまでとりあえず乗せてもらうことですね、そこまで行けば高速道路なので方向は結構同じなんです。

これまで100台以上は乗っているかと思いますが、普段出会えない人に出会えるのが魅力です。私は学生時代に学校の先生が苦手だったのですが、以前に教頭先生として働かれている方の車に乗ったことがありました。

学生時代は距離を取っていたタイプの方の話ですが、改めてじっくり聞いたら意外と楽しかったんですよね(笑)。

Q.6 同世代営業職の“つながリスト”と盛り上がる話題は?

営業マンの知り合いは多いですが、仕事の話はあまりしませんね。ただ、職場での年齢的な部分での不満などは耳にすることもあります。若い年代なので雑務も多く、これは自分がやらなくても良いはずとか、転職しようか悩んでいるとか……。

今は友達とシェアハウスに住んでいるので、そういったことも含めた人生相談だったり単なる冗談を言い合ったりと、大学生みたいな会話が多いかもしれません。

Q.7 移動中の愛読書を教えてください。

石川 文康 『カント入門』(ちくま新書)

移動中は、スマートニュースを見ることが多いですが、本だと最近は哲学関連が多いですね。今は入門的なものから読んでいます。営業にとって“伝える”という言語化能力は重要で、哲学は人の思考を言葉で体系化している学問なので、知れば表現の幅が広がると感じました。

その時から、たしかに意味合いは異なるけれど、違いってどこなのかが気になったので現在も読んでいるところです。もともと、スポーツの領域でもチームプレーに興味があったので、そういった組織についての知識が今後の仕事で活かせたらいいなと思っています。

Q.8 前回の“つながリスト”岡本さんから、「プレイヤーでもファンでもない新しい角度からスポーツを捉えられている方なので、きっとおもしろいお話をしてくださると思います。」とご紹介いただきました。

ありがとうございます! こんなに気の効いたコメントができず申し訳ないです(笑)。岡本さんとは、一度お会いしただけなのですが、スポーツビジネスに興味をお持ちだったということで、仕事についてお話をさせていただきました。自分から情報を取りに行く、アクティブで芯の強い方というイメージがあるので、今後は何かの形で一緒にお仕事できると面白いと思います!

 

取材・文・撮影/questroom inc. 撮影/柴田ひろあき

 

「営業マンの“つながリスト”」過去記事一覧はこちら >> http://sales.typemag.jp/category/life/connection

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派遣会社の元営業マン→養豚家へ。「一次産業の新3K」を体言する30代社長が語る「稼ぐ」ということ http://sales.typemag.jp/article/6401 neta 6401 Thu, 17 Dec 2015 07:00:35 +0000 人材派遣業大手パソナで新規事業を手掛けるなど、ビジネスの最前線で仕事をこなしてきた営業マンが、突然の転身。「一次産業を“かっこよくて、感動があって、稼げる3K産業”にする」という「夢」を掲げ、元営業マンが選んだ仕事は養豚家だった。

元営業マンの養豚家は、実家の農家を継いだ翌年、家業を株式会社化。生産する豚肉を「みやじ豚」と名付け、わずか2年で県内有数のトップブランドに押し上げ、農林水産大臣賞を受賞するまでに育て上げた。そして、ネット販売、銀座・松屋デパートや飲食店への納入、さらにバーベキューイベントの定期開催など、単に生産し出荷するだけだった実家の養豚業を「稼げるビジネス」の領域に押し上げている。

こうして、「夢」と「商売」の両立を成し遂げ、着実に一次産業を新たな3K産業へと展開し、農業プロデューサーとして、日本各地で講演も行うようになった宮治勇輔氏に、新3Kの一つでもある「稼ぐ」とは何かを聞いた。

営業type

株式会社みやじ豚 代表取締役/NPO法人農家のこせがれネットワーク 代表理事

宮治勇輔/みやじ・ゆうすけ

1978年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、株式会社パソナに入社。営業・企画・新規プロジェクトの立ち上げなどを経て、2005年に退職。実家の養豚業を継ぎ、2006年9月に株式会社みやじ豚を設立。生産は弟の大輔氏、自らはプロデュースを担当し、独自のバーベキューマーケティングにより、神奈川県のトップブランドに押し上げる。日本の農業の現状に強い危機意識を持ち、日本の農業変革を目指すためにNPOを設立。一次産業をかっこよくて、感動があって、稼げる3K産業にするために、さまざまな方面で活躍中

商売としてやっていくきっかけは“バーベキューマーケティング”

現在は、その実績、ノウハウを背景に農業プロデューサーとしても活躍し、講演会などにも積極的に赴く宮治氏。

そんな彼が、日本の農業の問題点を解決すべく4年3カ月勤めた大手人材派遣会社パソナを退社したのは26歳の時。もともと、30歳までの起業を目指し、社会人1年目から出勤前の勉強を欠かさなかったと言う。

そして、家業の養豚業を継いだ宮治氏が、まず始めたのが自分たちで育てた豚を食べてもらう「バーベキュー」であった。この行動の裏には、かつての苦い経験があったそうだ。

営業type

「大学2年の時、友達を呼んでバーベキューをしました。うちの豚を食べた友人が『こんなうまい豚肉は食べたことがない』と感動してくれたのです。でも、次の瞬間、『この豚肉、どこで買えるの?』と聞かれ頭が真っ白になりました。ここに農業の問題点があったのです」

宮治氏は会社員時代に農業関連書籍を読み漁る中で、日本の農業が抱えている問題が見えてきたと言う。

「問題点は大きく2つ。一つは農家には『商品価格の決定権がない』ということ。現状の市場では、生産し出荷したものを全量買い上げてくれる。ただし、価格は相場で決められてしまうので、価格の決定権がありません。もう一つが、『生産者の名前が消されて流通する』という問題。生産物は一緒くたにされスーパーに並び、お客さんからのフィードバックもない。それでは仕事に対する評価が得られず、やりがいを感じられません」

この問題点を逆手に取った方法がバーベキューだった。自分が育てた豚だから、価格の決定権を握ることができる。さらに、食べた人からは「おいしい」といった生の声でフィードバックが返ってくる。あとは売り先の確保だ。

営業type

「まず手始めに名刺管理ソフトとメール一斉送信ソフトを買ってきて、友人や名刺交換した人のデータベースを作ったら850人のリストができました。それが僕の最初の見込み客候補。彼らに自分が実家の豚農家を継いだことや、一次産業をかっこよくて、感動があって、稼げる3K産業にするために頑張ることなどを知らせ、ついてはバーベキューをやるから、ぜひうちの豚肉を食べてほしいというメールを送りました」

とはいえ、当初の予測では、バーベキューでの稼ぎはごくごく小さなものだったそうだ。

「月に1回、お客さんを30人ほど呼んでバーベキューをやり、1人4000円として売り上げは12万円。諸々を差し引いて、手元に残るは3万円。でも、実家なので家賃も食費もタダ。まあ、3万円あれば生き延びることはできるなという程度でした(笑)。リスクの少なさは、家業を継ぐメリットでもありますね」

また、宮治氏はバーベキューだけでなく、飛び込み営業も積極的に行った。

営業type

「飛び込みと言っても、飲食店に食事の予約を入れ、前もって『実は豚農家で』ということをちらっと伝えるんです。そして食事後に、シェフが挨拶に来た時『サンプルも出せるので使ってくれ』と営業していました。結果は全然ダメでしたけどね(笑)。おいしいものなんて世の中にあふれていて、銘柄豚は日本に400種以上もある。相手にもされませんでしたよ」

しかし、宮治氏の予測に反し、バーベキューは当初の売り上げ目標の月12万円を大きく超えていた。

「バーベキューを始めて3カ月後には、手応えを感じました。みやじ豚の直販体制の仕組みも整い、毎回60人ぐらいのお客さんが集まるようにもなり、これはイケるぞと思いました」

この背景には、バーベキューに訪れた人々の口コミが影響していた。おいしいみやじ豚を求めるだけでなく、夢の達成を目指す宮治氏を応援する人たちの輪が広がっていったのだ。

中には、自分が行きつけの飲食店の料理人やオーナーを連れてきてくれた人もいて、実際にその店で使用されたこともあったそうだ。

「相手の方から『ぜひみやじ豚を扱わせてくれ』と言われるようじゃないとダメなんですよね。それにはマーケティングが重要。だから、僕はこのやり方を“バーベキューマーケティング”と呼んでいます」

現在、湘南をはじめ神奈川や東京を中心に全国で約70の店がみやじ豚を扱っている。ネットショップの『みやじ豚直送便』は、生産が追いつかず売り切れることがあるほどの評判を呼んでいる。

また、こうした実践経験があるからこそ、農業プロデューサーとしての話にも説得力が増すのである。

一次産業の変革に欠かせなかった、会社員時代のビジネススキル

宮治氏がバーベキューマーケティングの方法論を見出した時、営業マン時代に身に付いたあることを思い返したそうだ。

営業type

「ビジネス書を毎朝4時5時に起きて読んでいました。そういった書籍の中に、『営業マンは、商品を売る前にまず自分を売れ』という言葉があり、僕はその通りだと思っていました。無数のおいしいものの中で、みやじ豚を選んでもらうには、味以外の部分も重要。僕の場合なら、一次産業を3K産業化するために頑張っているという自分の姿と、営業担当としての熱意を伝えること。これが、みやじ豚を選んでもらう大きな理由になるんです」

こうした積極的な宮治氏のスタイルにも、営業マンの経験が活かされている。

「もし僕が大学を卒業して、そのまま父親の後について農業だけやっていたら、自分と父親という小さな社会しか経験できません。当然、電話応対や名刺の渡し方といった、初歩的なビジネススキルすら身に付かない。農作業がうまくなって、いくら情熱があっても、今僕がやっているようなビジネスはできません」

また、別の理由でも宮治氏は、「営業」という職業の強みを感じているという。

「営業は、すべてにおいて潰しの効くスキルです。あらゆる業種において、営業は必要。営業マンは、商材の価値を見出し、その価値を伝え、メーカーが出す以上の値段で売って利益を生むんだから、営業ってすごいスキルなんですよ」

夢の実現のために「稼げる人間」に

今、世の中には「社会を変えたい」という思いを持った社会起業家に憧れる人は多い。宮治氏が目指すのも、まさに一次産業を変えたいという社会の変革である。では、そうした思いを実現するためには、何が必要なのだろうか。

営業type

「まずは自分が得意で、飯を食える分野=稼げる分野を作ること。何も強みのない人に頼めることは少ないですが、何か能力があれば地域や社会に必要とされる人材になります。加えて、夢を実現するには、それが本当に自分のやりたいことなのか?ということ。今、経営環境はどの業界も厳しい。それでも続けていくには何が大事かと言うと、『自分の思い=情熱』なんです」

ビジネスの側面を持ったみやじ豚の営業マンとして、また自らの夢である一次産業の変革を推し進める農業プロデューサーとして活躍する宮治氏。そんな宮治氏は、今後どんな目標を目指すのか。

「ビジネスの部分で言うと、みやじ豚のビジネスモデルを真似してもらったりで、波及効果もありました。『農家のこせがれネットワーク』というNPOも立ち上げ、自分のノウハウを全国に広め、実家が農家の都心で働いている人にも、家業を継ぐのも良い転職だよと話しています。これからはこの輪をもっと広めたいですね」

そして、輪を広げて言った先には、一次産業を「かっこよくて、感動があって、稼げる3K産業」にするという夢の実現がある。この夢を具現化するまでの青写真はどんなものなのか。

営業type

「最終的にはバトンタッチ。次の世代にいかに引き継ぐかです。これがファミリービジネスの最大の魅力だと思っていて、それを夢見てやっていくのが大事ですね。今は、僕のネットワークによるところが大きくて引き継げません。では、何が必要か。例えば、地元の方に贔屓にされるお肉屋さんを作ることです。みやじ豚を買いにくることができ、豚だけでなく、牛や鳥にお惣菜、それにパンなどもあって、ワンストップで買い物ができるお店があれば安心してバトンタッチできます。次の世代が、後を継ぎたいと思えるステージを残すことができるかどうか。これは農業界全体の課題ですので、何かしらの答えを出したいと考えています」

一次産業を変えたいという宮治氏の思いは、日本全国に波及し、宮治氏の背中を追うように農家を継ぐ若者も増加している。20代で養豚家へ転身した元営業マン。彼は今、農業を営業マンが活躍できる仕事にまで拡大しようとしている。

 

取材・文/questroom inc.、頓所直人 撮影/柴田ひろあき

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「恐怖心を越えた先に、新しい自分がいる」己の限界に挑戦したい営業マンに観てほしい映画『ザ・ウォーク』【連載:シネマセラピー】 http://sales.typemag.jp/article/6413 neta 6413 Tue, 15 Dec 2015 07:00:39 +0000 映画ソムリエ・東 紗友美がアナタにピッタリの1本を処方 映画でお悩み解決☆シネマセラピー

心理カウンセラーの資格を持つ映画ソムリエ・東紗友美が、若手営業マンが抱える悩みに役立つ作品をご紹介! 広告代理店勤務の営業マンだった経験を活かし、ガシガシ皆さんの質問にお答えします!

プロフィール 営業type

映画ソムリエ 東 紗友美

1986年6月1日生まれのA型。あだ名は“ガシヒー”。広告代理店勤務の後、フリーランスの映画コメンテーターへ転身。年間400本以上の作品を鑑賞し、映画関連のテレビ番組に出演する一方で、新聞や雑誌、Webなどへの執筆も行う。また、映画公開イベントのMCとしても活動し、映画業界を盛り上げるため多方面で活躍中。『ヒガシアター。』: http://higashisayumi.net/

今月の相談

できないと思うことに対して挑戦したい気持ちがあるものの、実行に移すまで、気持ちがなかなか追いつきません。自分の限界をすぐに決めつけてしまう性格なんです。そんな後ろ向き気味の性格にカツを入れるべく、背中を押してくれるようなパワフルな映画はありませんか? (20代/出版関係営業)

今月のお悩みにピッタリなのはこの1本!
『ザ・ウォーク』

来たる2016年、自分の殻を破りたくてウズウズしている、新しい自分を目覚めさせたい、そんな気持ちを悶々と抱えている人に朗報!自分に100万馬力のエンジンをかけてくれる映画を紹介します。

「できないと思っていたことを、やってみよう!」

そう思えるようになる、まさに「映画の力」を感じる作品です。

営業type

まず、注目すべきは、本作が“ワイヤー・ウォーカー”と呼ばれたフィリップ・プティの実話を基にした映画だということ。舞台は1974年のNY、当時、世界一の高さを誇った摩天楼「ワールド・トレード・センター」です。そう、2001年9月11日に崩れ落ちた、高さ411m、地上110階のあの2塔のタワーの間を、ワイヤーロープたった一本でつなぎ、命綱なしの空中闊歩(=綱渡り)に挑んだ男の話なのです。

不可能と思える挑戦を描いた作品で、手に汗かきまくりの2時間です。ジムやランニングに行くより汗をかけちゃうかも……。

そして驚くべき事実がもう1つ。こんなヤバ過ぎる挑戦なのに、その時の記録を映した動画が1本もないんですって!! だからこそ、このたび、ハリウッドを代表する映画監督、ロバート・ゼメキス氏が映像化に挑んだわけであります。

主人公が恐怖を抱えながらも、それ以上に「挑戦したい」という気持ちにグイグイ突き動かされ、ちょっぴりクレイジーになっていく様子、これを観ればきっと後ろ向きな自分の背中を押してくれるはずです。

ココにも注目! 情熱が恐怖心を消し、周囲の人間を巻き込んでいく

営業type

新年早々、心拍数上げまくりのこちらの映画。 見どころも盛りだくさんなだけに、私なりに2点セレクトしてみました。

見どころ【1】 体験型映画!!コワ過ぎるのに美し過ぎる、心揺さぶる映像

上記の写真からも分かるように、強烈な天空世界の映像は圧巻。綱渡りのシーンの迫力は、多分この記事を読んでくれているあなたの想像の何倍もあるので、ぜひ、3Dでご覧ください。

当然ながら、現在のNYにワールド・トレード・センターは存在しないのですが、綱渡りのCGがリアル過ぎてアメリカでは上映中に具合が悪くなり、途中退出する人もいたとか……。ホラー映画じゃないのに、試写室では「ひゃぁ」、「ヒィ」の声が漏れまくりでしたよ。

しかーし、東京タワーの展望台でも足がすくんで涙ぽろりした、生粋の「高いところ苦手人間」の私が、この映画では恐怖を越える新感覚を味わったんです!それは……。

「超コワイ。でも、この美しさは観ないともったいない!」という感覚。

何度も目をつぶってしまったし、ブルブルっと鳥肌が立ったのも事実だけど、カメラアングルが変わり違う景色が現れるたび、普段は決して味わえない、出会ったことのない“天空の世界”の美しさにハッとしました。私自身、恐怖心を越え、新しい自分に出会えた気がしました。こうやってフィリップも魅了されたのでしょうか。

見どころ【2】 綱渡りシーンだけじゃない!「スパイ映画」的な要素も楽しめる、物語の面白さ!

綱渡りシーンばかりが取り上げられがちなこの作品。でも、私としては、物語にも注目してほしいんです!

ワイヤー・ウォーカーのフィリップ・プティは、幼少期に観たサーカスで綱渡りと出会います。その後、独学とサーカスでの修業経験を経て、大人になってからは、フランスの街角で綱渡りのパフォーマーとして日銭を稼ぐように。そんなある日、あの“2塔のビル”の存在を知り衝撃が体中に走ります。

そして、違法と分かっていても、取り憑かれたように無謀な挑戦を実行に移していきます。当然、ビルの許可なんか下りない。だから無許可でやるしかない。そこで、自分の熱い思いを仲間(共犯者)へ語り、周囲の人の協力を得てゲリラ的に綱渡りを実行しちゃいます。

営業type

何度も言いますが、これ実話なんです。

フィリップと仲間たちは、2塔のタワーの間の正確な距離を測るため、報道陣に変装したり、大きな荷物の中に隠れて深夜のビルに忍び込んだり。「え、実際にやっちゃったの?」と思うような、スパイ映画顔負け&“綱渡り感”満載な物語が進んで行くのです。

何が、無謀な挑戦へと彼を突き動かしたのか……。それは映画館でぜひ確かめてほしいのですが、私は、こんな無茶な挑戦を描いた映画だから学べることがあり、それが質問者さまのお悩みのアンサーだと思うんです。

その答えと言うのは、「クレイジーなぐらいにのめり込んでこそ、周囲の人間を動かし、巻き込むことができる」ということ。

これ、仕事の上でも大変参考になります! 熱意が人を動かす時ってありますよね? そんな瞬間をこの映画ではたくさん垣間みることができるはず。

人生は1度きり。後ろ向きでいるなんてもったいないです。毎日を行動的に、大切に。そんな気持ちを映画から感じとれたなら、観賞後の足取りもふわっと軽くなると思いますよ!

では、背中を押してほしいアナタに『ザ・ウォーク』を処方します。これでアナタのお悩み、解決しますように。

そして……。実は、今回の掲載をもちまして「映画でお悩み解決☆シネマセラピー」は最終回となります。これまでご覧頂いていた皆さんとお別れするのは、大変寂しいですが、いつかまたどこかで、お目に掛かれればと思います。

それでは皆さま、「See you again!!」(東紗友美)

【今月の1本】

営業type

『ザ・ウォーク』
原題:『The Walk』
原作:『TO REACH THE CLOUDS』 by フィリップ・プティ
監督:ロバート・ゼメキス
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ベン・キングズレー、シャルロット・ルボン、ほか
制作年/国:2015年/アメリカ
公開日: 2016年1月23日(土)全国ロードショー
『IMAX3D』上映も決定!
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
URL:http://www.thewalk-movie.jp/

  『シネマセラピー』過去記事一覧はこちら >> http://sales.typemag.jp/category/life/cinema]]>
「日本人の“血”が御用聞き営業を求めている」街の電器店が年商10億円を稼ぐ理由 http://sales.typemag.jp/article/6381 neta 6381 Mon, 14 Dec 2015 07:00:19 +0000 毎日お得意さまのもとへ東奔西走。訪問するたびに行われる値下げ交渉の攻防や、リピートをもらうためのご機嫌取り。営業マンの中には、そんなスタイルを「御用聞き」と揶揄し、カッコ悪いイメージを抱いている人もいるかもしれない。

だが、そんな「御用聞き営業」を実直に重ね、大手量販店ですら苦戦を強いられる厳しい家電戦争の時代に20年間も黒字経営を続けている会社がある。東京都町田市に店舗を構える『でんかのヤマグチ』だ。

一見すれば、昔ながらの「街の電器屋」。しかし、その中身は大手も驚く顧客主義が貫かれていた。独自路線を突き進むでんかのヤマグチの姿から、今、改めて「御用聞き営業」の価値を問い直したい。

営業type

『でんかのヤマグチ』代表取締役

山口 勉/やまぐち・つとむ

1942年、東京都生まれ。松下通信工業(現パナソニック)を経て、1965年、町田市で『でんかのヤマグチ』を創業。地域密着型の週末イベントや粗利重視の営業戦略など、独自の経営論で同社を名物電器店へと育て上げる

創業以来の経営危機。だからうちは「安売り」をやめた

創業してから50年。今でこそ徹底した「御用聞き営業」のスタイルで地元、町田市民に愛され続ける街の電器屋『でんかのヤマグチ』だが、今から約20年前、最大の危機に面していた。店舗の1.5km圏内に大型家電量販店が相次いで6店舗も進出し、深刻な顧客離れが危惧されたのだ。概算で約30%の売上減。創業者にして代表取締役社長の山口勉氏は、この未曽有のピンチを前に、そう予測を立てた。

「この3割の売上減をどうカバーするか。そこで考えたのが、粗利率の改善です」

当時の『でんかのヤマグチ』の粗利率は25%。これを35%まで引き上げようと決断した。粗利率を上げるには、卸値を抑えるのが鉄則だ。しかし、大量に仕入れられる大手量販店とは違い、小さな電器屋が、大手メーカーを相手に仕入れ価格をコントロールするのは現実的に難しい。そこで、山口氏は販売価格に目を向けた。

営業type

「よく『利は元(卸値)にあり』っていうけれど、うちはその逆。『利は売価にあり』の精神で、他店よりも高く売ることを決めました」

競合各社が「1円でも安く」と躍起になる中、時代に逆行するような高価格路線。例えば、量販店なら15万円ほどのテレビを、ヤマグチは30万円で売る。そんな大胆無謀な計画を成功させるために行ったのが、顧客リストの精査だ。

5年以上購入履歴のない顧客はリストから外し、他店のチラシを持って値引きを要求してくる相手にも「じゃあ、よそで買ってください」と応じた。結果、顧客リストはそれまでの3分の1にまで絞り込まれた。

「お得意さまが3分の1になった分、残ったお客さまには3倍のサービスを提供しようというのが、うちの考え。お客さまには失礼になってしまう言い方になりますが、お客さまがヤマグチを選ぶのではなく、ヤマグチがお客さまを選ぶという方針に切り替えたのです」

「遠くの親戚より、近くのヤマグチ」。転機は徹底した付加価値営業への切り替え

それが、現在まで続く「御用聞き営業」誕生の瞬間だった。3倍のサービスで、価格以上の価値を感じてもらう。いわゆる付加価値営業への転換である。しかも、この徹底ぶりが半端ではない。

[caption id="attachment_6384" align="alignright" width="300"]営業type 店内のPOP。「修理受け付けます」などのコピーではなく、「お困り事受付店」とある[/caption]

テレビの配線や電球の取り換えなんて朝飯前。旅行に出かける顧客に代わって庭の植木に水をやったり、通院する顧客を車で病院まで送迎することは日常茶飯事だ。「街の電器屋」の枠を軽く飛び越え、顧客が困っていることがあれば何でも駆けつける。

「中には買い物に出かけたお客さまが、出先でエアコンを切り忘れたことに気付いて、うちの営業マンに電話してくれたこともあって。『悪いけど家まで行ってエアコンを切ってもらえないか。合鍵の隠し場所はどこそこだから』なんて頼まれたこともありました」

営業type

まさに「遠くの親戚より、近くのヤマグチ」という同社の標語を象徴するようなエピソードだが、「今では『近くの子どもより、近くのヤマグチ』ですよ」と山口氏は笑う。実の子どもにもおいそれと頼めないことも、ヤマグチになら気兼ねなく頼める。そんな盤石の信頼関係が築かれているのだ。

「粗利を追求していこうと決断して以来、うちでは売上計画というのをやめました。売上が目標にあると、どうしても利益そっちのけで、安く売って数字を埋めようとする。でも、それじゃいけない。代わって徹底しているのが、利益計画です。外回りから帰ってきたら、営業マンはみんな『今日上げた利益はいくらでした』って会話をしている。そのためにも、製品ひとつひとつの卸値まで全員にきちんと把握させています」

こうした抜本的な経営改革に最初は不安もあったと言う。しかし、1年1年と着実に粗利率は向上し、8年目で当初の目標であった35%に達した。売上の内訳を見れば約65%が訪問販売。顧客層は、50代後半以降のシニア層が中心だ。逆風の中、舵を切った「御用聞き営業」への特化が、『でんかのヤマグチ』を競合間の熾烈な価格競争にも負けない超優良店へと押し上げたのだ。

よそはよそ、うちはうち。量販店のチラシは20年間一度も見たことない

『でんかのヤマグチ』のオリジナリティは、こうした“我が子以上”の親密な関係性づくりだけに限らない。他にも象徴的なのが、店頭での週末イベントだ。店先にテントを出し、季節に応じて、ジャガイモやサンマ、鹿肉など様々な食材を使った料理を振る舞い、来店客にお土産として持たせる。普通の電器屋では見られないこんな特殊な光景が、もうかれこれ37年も続いていると言う。

今や近隣の住民にとって、ヤマグチのイベントは街の名物である。幼い頃から両親に連れられ、よくイベントに遊びに来ていた若い世代が、大人になってヤマグチに家電を買いに来るケースも珍しくない。異色の週末イベントが、世代を超えた顧客との関係作りに一役も二役も買っているのだ。昨今、大手量販店が顧客を囲い込むために軒並み導入しているポイントカードも、『でんかのヤマグチ』では扱っていない。

「うちは胃袋でお客さまの心を掴む。店先で鹿肉を食べたら一生忘れないでしょう(笑)」

この潔さが、山口氏の最大の武器だ。実際、山口氏は一度も近隣の大型量販店を覗きに行ったことがないそうだ。それどころか、他社の折込チラシの価格も一切チェックしないという。

「商売っていうのは、他人との戦いじゃなく、自分との戦い。それくらいでないと、こんな小さな電器屋はやってられませんよ」

ルートセールスに徹しているものの、口コミで評判を聞いた新規顧客の来店も後を絶たない。

営業type

「営業マンが話す100回のセールストークより、たった1回、お客さまから『ヤマグチっていいよ』とお知り合いに言っていただける方がよっぽど効果的。そのためにも私たちはとにかくお客さまのお困りごとに精一杯お応えするだけ。今いるお客さまを大切にすることが、一番の顧客獲得なんです」

この信念の土壌となっているのは、山口氏自身の幼少期の経験だ。町田に生まれ、実家が農家だった山口氏は、味噌や醤油が切れたら気軽に隣近所と貸し借りし合う環境で生まれ育った。そうした頼り頼られる昔ながらのコミュニケーションを、平成の世に『でんかのヤマグチ』で実践しているのだ。

「昔はそうやってちょっとした困りごとは隣近所で助け合って生きてきたんです。表面上は欧米化されたところがあるとしても、本質的には私たち日本人は大らかな農耕民族。ちょっとくらい他より高くても、そういう恩や縁があれば、ちゃんとうちで買ってくれるんです。若い人は御用聞きなんて効率が悪いと思う人もいるかもしれませんが、やっぱり直接お邪魔してご要望を伺う御用聞き営業は、商売の原点なんですよ」

競争の激化する家電業界で、着実に成長し続ける『でんかのヤマグチ』。その経営の本質には、古き良き日本の原風景があった。

 

取材・文/横川良明 撮影/竹井俊晴

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どうなった?話題の店舗その後~住みたい街の人気立地で意外な苦戦『グランツリー武蔵小杉』 http://sales.typemag.jp/article/6241 neta 6241 Fri, 11 Dec 2015 07:00:08 +0000 営業type

出店に際し、メディアに取り上げられるなど、話題を集める店舗は多々ある。しかし、その後が報道されることはあまりない。ただ、営業マンにとって、話題を集めた店舗の“その後”を知ることは「売る」ことのノウハウを得るきっかけになる可能性もある。

そこで、流通ライターが実際に足を運んで話題になった店舗とその現状をレポートする、雑誌『激流』の連載『どうなった?話題の店舗その後』の記事を取り上げる。

※この記事は『激流』2015年6月の記事「どうなった?話題の店舗その後~『グランツリー武蔵小杉』」の転載です。

東京からのお客を取り込めない

セブン&アイ・ホールディングスが、新しいショッピングモールと位置付ける『グランツリー武蔵小杉』が、住みたい街として人気の高い武蔵小杉エリアに昨年11月22日にオープンしてから、約5カ月が経った。

世帯年収1000万円以上のファミリーが多く住むと言われ、ムサコ族やムサコ妻などの言葉も話題となっている。

そんなお客が来店する店舗を、4月のサクラが咲き散るまでの間の平日と土曜日の夕方に数日間、視察し買い物をしてみた。

[caption id="attachment_6248" align="alignleft" width="250"]営業type ムサコ族、ムサコ妻も話題となった立地に出店[/caption]

『グランツリー武蔵小杉』は、日本一のモール密集地帯にある。南にはショッピングモール売り上げトップクラスを誇る『ラゾーナ川崎プラザ』、車で30分前後走れば、トヨタが運営する『トレッサ横浜』や三井の老舗モール『ららぽーと横浜』。横浜のベッドタウンであるセンター北やセンター南には、阪急や東急が運営するモールなどが複数点在している。

東京・渋谷・新宿・横浜など電車で20分圏内には多数百貨店があり、激しい競合エリアでのモール展開となった。

平日の夕方。武蔵小杉駅から歩いて3分ほどの駅近立地にもかかわらず、1階の食品フロアを除く2階以上のフロアは、お客が少なく閑散としていた。ショッピングモールは休日型の業態ということもあるが、店前でお客に複数ヒアリングすると、平日は昼間も同様の状況のようだ。

店舗の客数をウォッチすると、店員のほうが数が多い店舗があるなど大変厳しい運営が見てとれた。特にイトーヨーカドーや西武そごうの売り場が顕著で、ロフト、タワーレコード、GAP、ZARAなどのテナントもお客が10人前後だった。売り場面積が広いが故に、より店内が閑散として見え、スペースに見合った売り上げを上げられていない可能性がある。

モール通路にある専門店はより深刻のようで、調査時にはお客が入っていない店舗も多く、テナント専門店本部関係者に話を聞くと当初の集客数の当てがはずれており、モール運営側との議論が活発化しているようだ。

立地産業と言われるコンビニエンスストアでは、セブン-イレブンが圧倒的な調査でローソンやファミリーマートなど他チェーンの追随を許さない状況であるのに、ショッピングモールの立地選定には苦戦をしている模様なのが不思議でならない。

ショッピングモール競合エリアではあるが、近くに流れる多摩川を越えて東京都に入ると、ほとんどショッピングモールがないことから、田園調布など大田区や世田谷区からの富裕層の車客を想定していたと考えられる。ところが、選定テナントが客層に合っていないためなのか、土曜日・日曜日でも駐車場は並ぶことがなく入店できる状態だ。ナンバープレートをチェックしてみると、約2割が東京のナンバーで、県境ということを考えると、当初想定していたであろう東京のお客を取り込み切れていないのではないかとも推察される。

定期的な来店に繋がっていないのは、期間限定のポップアップストアやイベントが少ないのが理由ではないかとする業界関係者の話も聞いた。

また、4階は、子供のアイテムから家族のファッションやフードコートまで揃えている。まさにムサコ族をターゲットとしたフロアになっているが、ムサコ族は世帯年収が1000万円を超えると考えられているものの、長期の住宅ローンを抱えている世帯も多く、年金など先行きの不安などから、財布の紐が思ったより固かったようで、4階のテナントの売り上げは苦戦しているようだ。

飲食店は繁盛 衣料品は不振の構図

[caption id="attachment_6247" align="alignright" width="250"]営業type 近隣のスーパーらと比べて、ヨーカ堂の木曜の夜の惣菜は割引率50%と高い値となっていた(ダイエーのフーディアム)[/caption]

ただし、フードコートは4階にもかかわらず休日は埋まっていて、昼時などは席を容易に取れない場合も多い。訪問した平日の夕刻も約3割程埋まっており、好調さが見受けられた。

1階にあるレストラン街も、1500円以下で食べられる店は繁盛していて満員だった。牛タンの『喜助』は5名の行列があったが、お店の人に話を聞くと、ピーク時には行列が絶えないようだ。飲食店は、『グランツリー武蔵小杉』の今後のキーファクターになるのかもしれない。

すでに検討に入っているのかもしれないが、ロイヤルユーザーである武蔵小杉駅近くの高層マンションに住むムサコ族のニーズや状況、住民が歳を取っていくことも鑑み、短期・長期の両視点でテナントの入れ替えや売り場の大きさの変更など、実行するのは先になるとしても、ロードマップを描く必要がある。メインテナントである、イトーヨーカ堂の決算は、14年度純損益が68億円の赤字で、『グランツリー武蔵小杉』の来店客数を見てもイトーヨーカドーのフロアの販売不振が見て取れる。特に衣料品の売り場は、この2回の訪問時以外にも常にチェックをしているが、お客が入っているのをほとんど見たことがない。

イトーヨーカドーは店舗数が180店舗と少ないこともあり、衣料品PBは、例えば男性肌着などはフジボウアパレルやグンゼなどの日本有数メーカーと共同開発している。そのため、ユニクロなどのSPA企業より、素材セレクトや縫製ノウハウが上回っていると考えられる。が、圧倒的なVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)ができる商品の物量と宣伝でSPAの後塵を拝しているため、商品の品質や価格以前の段階で購買されていないというのは、購買が横に倣えとなりがちな日本らしい現象かもしれない。

[caption id="attachment_6246" align="alignleft" width="250"]営業type 『ららテラス武蔵小杉』[/caption]

食品売り場では、近隣に駅直結の三井グループの『ららテラス武蔵小杉』の成城石井やダイエーのフーディアム、駅逆口の地域に根差しているイトーヨーカドー武蔵小杉店といった競合の食品スーパーが多数あるものの、お客が一定数来店している。

しかしながら、少し心配になる光景も目にする。木曜日の19時30分の惣菜売り場はお客でごった返していたが、理由は惣菜の割引の大半が50%引きで、豊富な品揃えがあるためだった。

近隣の食品スーパーを回ってみると、駅直結の『ららテラス』で惣菜を売っているテナントは売り切れ、もしくは30%前後の割引率で、ダイエーのフーディアムも同じく30・40%の割引率だった。2店とも販売スペースが『グランツリー武蔵小杉』内のヨーカドーと比べて狭く、適正な売り場スペースとなっているように感じる。食品売り場は近隣の有職女性をターゲットにしているのはわかるが、売り場が広いため品揃え量が多く、売れる量と売り場のバランスで、割引率も50%引きと高くなっていると思われる。そのため、他の2店と比べて、駅から遠くてもお客の支持はある反面、定価販売では買わないお客が日を追うごとにどんどん増えていっている気がする。

フランチャイズという特性はあるが、セブン-イレブンが定価販売にこだわりを見せているのとは対照的な光景であった。また、50%引きの惣菜に群がる近隣住民を見ると、100円ショップや家電量販などの大衆テナントの早期導入の必要性も感じた。

2階部分にある西武・そごうは、客層の違いもあり、店内への誘客に苦戦しているようで、タイムセールなどを店先で行い、店内にお客を呼び込んでいるようだ。

オムニチャネルの実験としてそごう横浜店と西武渋谷店をライブ中継で繋ぎ販売を実施しているが、事前予約制であるにもかかわらず、お客の利用が少ないのか、簡単に予約が取れる状況であった。

そもそも両店とも、武蔵小杉から電車で15分前後で行ける立地のため、わざわざライブ中継で買い物をする必要がないからとも考えられる。

今後、地方のお客がライブ中継で都会の店員と接することが可能性としてはあると考えられるので、現状の苦戦はあるものの、今後もこのサービスの変遷を見守っていきたいと思う。

またオムニチャネル戦略は、鈴木敏文会長が「第2の創業」と位置付けている悲願でもある。10月から本格スタートすると言われるが、今後の展開に大いに期待をしたいと思う。

セブン&アイ・ホールディングスの取締役には、サラリーマン経営者のご子息としては珍しく社内外の賛否がある、次男の鈴木康弘氏が就任した。『グランツリー武蔵小杉』は、親子2代での取り組みとなるオムニチャネル戦略およびセブンイレブン以外のグループ小売業の未来を占う上での試金石になると考えられる。

そんな日本小売業の歴史の1ページをリアルな売り場で検証しつつ、並行して買い物を楽しんでいきたいと思う。

流通ライター 法理 健

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営業type 激動する流通業界の羅針盤『月刊 激流』

『月刊 激流』は1976年、製配販にまたがる流通業界の専門誌として創刊。スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、百貨店など、小売業の経営戦略を中心に、流通業の今を徹底的に深掘りします。メーカーや卸業界の動向、またEコマースなどIT分野の最前線も取り上げ製配販の健全な発展に貢献する情報をお届けする月刊誌です。現在、弊誌編集方針として力をいれているのは、川下(小売業界)からの情報を川上(メーカー)に正しく伝えることです。『激流』の特色とは、小売業界の情報(経営、商品等々)に強いことです。それをできるかぎり誌面に反映します。
『月刊 激流』http://www.kokusaishogyo.co.jp/gekiryu/201512.html

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アイドルプロデュースは新規事業の教科書だ! 路上スカウトで生まれた『ゆるめるモ!』がZeppでワンマンライブを行うまで http://sales.typemag.jp/article/6335 neta 6335 Thu, 10 Dec 2015 07:30:49 +0000 AKB48や、ももクロ、モーニング娘。などを例に挙げるまでもなく、日本のアイドル業界は群雄割拠の様相を呈している。現在、全国で活動するアイドルは500組以上と言われる中、にわかに注目度が高まっているのが、2012年に結成された6人グループ『ゆるめるモ!』だ。

アイドルといえば、スカウトやオーディションで集められた女の子たちが芸能事務所からデビューするのが通例だが、『ゆるめるモ!』は結成時から無所属。プロデューサーである田家大知氏も、プロデュースの経験はゼロという異色のスタートを切っている。田家氏によれば、「アイドルのことすらロクに知らなかったボクが、勢いでゼロから作ってしまったグループ」(田家氏)だと言う。

だが、結成から3年目の今年5月、赤坂BLITZのワンマンライブでは1200人を動員し、12月20日にもZepp Diver Cityでワンマンライブを開催するまでに飛躍を遂げた。

いったい、ド素人のプロデューサーがド素人のアイドルを、いかに育て上げたのか――。その過程を取材したところ、まさに新規ビジネスを興す時に直面する課題の映し鏡だった。

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『ゆるめるモ!』プロデューサー

田家大知/たけ・たいち

1974年、東京都生まれ。明治大学文学部在学中に1年間休学し、世界26カ国を放浪。卒業後は雑誌編集者を経て音楽ライターに。その後、2012年10月にアイドルグループ『ゆるめるモ!』を結成させ、まったくの未経験の状態からプロデュース活動を開始する

吐きそうになってもやめなかった路上でのスカウト活動

まずは、田家大知氏の経歴をざっと紹介しよう。

彼は『ゆるめるモ!』のプロデューサーになるまで、音楽系のフリーライターとして活動していた。主な執筆ジャンルは、国内外のロック音楽。プライベートでもバンド活動を行ったり、好きなバンドの追っかけも兼ねて世界を放浪したりと、筋金入りのロック好き。アイドルなんてまったく興味がなかった。

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そんな田家氏がアイドルプロデュースを思い立った理由とは何だったのだろう。

「ある日、ももクロの『ピンキージョーンズ』という曲を聴いた瞬間、衝撃を受けました。アイドルでもこんなに面白い音楽をやっているんだ!と。それからはももクロにハマり、ライブに通い出すようになって、そのうち、『自分ならこういう曲をやるのに』『自分ならこう見せるのに』と、ファンでいることに飽き足らなくなっていったんです」

そう感じていたのが、『ゆるめるモ!』結成3カ月前の頃。当時の田家氏が「自分ならこうするのに」と思い描いていたアイドル像はこれだった。

「ニューウェーブ(ロック音楽のジャンルの一つ)やインディーロックといった、あまり日の目を見ない音楽ジャンルをやるアイドル。どのアイドルもやる気配がなかった音楽で、これをやれば面白いことになるんじゃないかと思っていました」

そんな田家氏にとって、プロデュース活動の第一歩目は、なんと路上でのメンバー集めだった。

「原宿、渋谷、新宿、秋葉原で良いなと思う子がいたら、所かまわず声を掛けました。スーパーのレジ打ちをしていた子にも声を掛けましたね。『キメェよ!近寄んじゃねえ!』なんて罵倒されることはザラで、それはもう傷つくし、凹むし、吐きそうになるし(苦笑)」

路上で声掛けした女の子の数は、1カ月間で300人ほど。

「最初は直球で『アイドルになりませんか?』と声掛けしていたのですが、途中で『何やっている方ですか?』と話し掛ける方が効果的だと気付きました。会話を進める中で、『美容師になりたい』などと夢を持っている子がいたら、『そういう子にチャンスを与える活動しています。話を聞いてみませんか?』と返す。そこで食いついてくる子とは連絡先を交換し、後で『なぜ自分がアイドルを作りたいのか、そのためにはキミの力が必要なんだ!』と、全身全霊で作成した長文メールを送りました」

メンバーが続々脱退......『ゆるめるモ!』解散の危機も経験

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こうして最後まで連絡を取り合うことになった4人で『ゆるめるモ!』を結成することになるのだが、アイドル業界のことは右も左も分からない。

「本当にゼロからのスタートでしたので、アイドルイベントの仕組みも分らないし、どこのライブハウスに出ていいのかも分かりませんでした。ただ、メンバーにアイドルになったという自覚を持たせるためにも、ライブは結成から2カ月後にやると決めていました」

そして結成から2カ月後、当初の予定通り、初ライブが決まった。田家氏がバンド時代に何度か出演していたという縁もあって、渋谷のライブハウスのアイドルイベントに出演させてもらうこととなったのだ。

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「初ライブでは数組のアイドルグループが出演したのですが、もちろん『ゆるめるモ!』のファンはゼロ。そんな中、何とか歌い切ることはできたのですが......。アイドルの合同ライブって、ステージの終演後に物販の時間が設けられていて、そこでグッズを売ったり、握手会をするものなんです。でも、初ライブの時はそんなことも知らず、スタッフの方に『なんでグッズ売らないの?』と言われて慌てて近所の100円ショップにTシャツを買いに行く始末。それにメンバーのサインを入れて一枚500円で売りました」

一事が万事、手探りの状態で進めていったアイドル運営。その資金源はライブでの入場料や物販なのだが、駆け出しのアイドルにそうした収益は見込めない。

「1時間2000円ほどのスタジオレンタル料やメンバーの交通費など、活動費はすべてこちらの持ち出しでした」

そして、当時の田家氏を最も悩ませたのがメンバーの離脱だった。

「活動初期の頃はメンバーも不安。もともと普通の女の子たちですから、1人1人としっかり向き合い、不満や望みを聞いてあげることが大切。でも、思い通りにいかないことが多くて、当時、センターを務めていた子が離脱し、さらにもう1人の子も体調を崩して休みがちになり、残った2人だけでライブをこなさなければならない状況となりました」

迫り来る解散の危機。アイドルプロデュースがお金儲けの手段であったなら、ここで挫折していたかもしれない。しかし、田家氏の心は折れなかった。新メンバー募集サイトを立ち上げ、『世界同時募集』というキャッチーな触れ込みで2期生を募集。その結果、5人の新メンバーが加入することとなった。瀬戸際に立たされていた田家氏を支えたものとは何だったのか。

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「ボクはお金儲けのためにプロデュースをやりたかったわけではありません。自分が良いと思う音楽を世に届けたい、それには自分が歌うよりも、アイドルというフォーマットを使う方が断然、世の中に広がりやすい。それがボクのプロデューサーとしての出発点ですし、どんな状況に陥っても、その思いがブレることはありませんでした」

新メンバー加入後は、フライヤーなどをチェックしては面白そうと思えるイベントの主催者に片っ端から長文メールを送って自身の思いを伝えた。

「100件送って、返信が届くのは5件くらい」。それでも、「『面白そうだね、ぜひ会いましょう』と言ってもらえることが喜び」だった。

こうして地道にイベント出演を重ね、他のグループとは一線を画す個性派アイドルとしての評判が広がり、イベント主催者から出演のオファーが届くようになる。

時代をリードしつつ、時代に寄り添う

『ゆるめるモ!』がアイドル業界で評価されている点は、何よりその音楽性にある。

「曲の方向性は、ニューウェーブ、ヒップホップ、ポストパンクあたりの尖った音楽をぶち込み、雰囲気はゆるく仕上げる。その根底にあるのは、世の中に迎合しないこと、時代をリードすることです。それを表現するには結構な勇気がいりますが、そこは絶対に躊躇しないと決めて、作曲家さんや作詞家さんにはディレクションさせてもらっています。

例えば、初期の代表曲『SWEET ESCAPE』は曲の時間が10分もある、恐らくはアイドル史上最長の曲。作曲の前段階からボクの中で明確な完成ビジョンがあった曲。『ゆるめるモ!』は“これくらいはぶっちぎるよ”と世の中に提示するために形にしました」

そう話す田家氏は、自身が思い描く音楽性にゆるぎない自信を持っている。

「ボクの中では、こんなに良い楽曲があって、こんなに面白いメンバーがいて、有名になれないはずがないと確信しています」

今後の目標は?と聞くと、「メンバーそれぞれ個々の可能性を見出し、社会での居場所を獲得すること。そして、武道館でワンマンライブ開催と紅白歌合戦出場!」と、田家氏の目線は驚くほど高い。それゆえ、赤坂BLITZのワンマンライブで1200人を動員した実績にも、12月20日にZepp Diver Cityでワンマンライブを控えている現状にも、「手ごたえはあんまり感じてないんです」と浮かない表情を見せる。

そんな田家氏が見据えているものとは何なのだろうか。

営業type

「今はコアな音楽ファンばかりがうわっと騒いでいる状況ですが、これからはファン層をお茶の間に広げたいと思っています。そのためにまず、曲作りでは少し時代に合わせること。一歩先を行くとなかなか時代が追いついてこないので、半歩先程度に歩幅を縮める、そんなイメージですね」

2015年11月には、それを形にした『ゆるめるモ!』のセカンドフルアルバム『YOU ARE THE WORLD』がリリースされている。実は、有名ミュージシャンから提供された楽曲も含んだ力作だ。(収録曲の一部は以下)

『夢なんて』

 

『もっとも美しいもの』

 

『Only You』

「全17曲を収録していますが、お茶の間の方々にも受け入れてもらえるよう、前半はなじみやすいポップスの曲を並べ、中盤から徐々に深みの方へと連れて行って、気がついたら別世界にいた!みたいな、そんな曲の構成にしています。一度聴いてもらえれば、魅力が分かってもらえるはずです」

そう話す田家氏に最後に聞いてみた。“自身にとってのアイドルとは?”

「ルールに縛られない、何でもできちゃうスゴい表現方法。エンターテインメントとしては、最高に面白い! 『アイドルだから、こんなに面白いんだよ』と、メンバーにも伝えていきたいですね」

今後もアイドル業界を騒がせてくれそうな『ゆるめるモ!』。今後の活動から目が離せない。

 

取材・文/questroom inc.、興山英雄 撮影/柴田ひろあき

Information

営業type ゆるめるモ!「YOU ARE THE WORLD TOUR」ファイナル

過去最大のライヴステージで、過去最高のパフォーマンスを全曲生演奏で贈る!メンバー6人の生き様を乗せた音楽が、怒濤の3時間ノンストップで鳴り響く!!

日程:2015年12月20日(日)
時間:開場16:00 開演17:00
場所:Zepp DiverCity TOKYO
料金:前売り¥5,000(税込) ※ 1F自由、ドリンク代別
チケット情報:http://www.red-hot.ne.jp/live/detail/24182
オフィシャルHP:http://ylmlm.net

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